矢野西5丁目の銭湯「日の出湯」。廃材で沸かしたお湯を使い、浴室は70年以上ほとんど変わらない、レトロなタイル張りになっている。
営むのは秋田敏子さん(83)。売りに出ていたのを購入し、1966年に夫の故敏夫さんと開業した。
「シャワーを付けるとか少し手を入れたけど、ほどんと当時のまま。昔のタイルがないけえ、湯船はつぎはぎよ」と、秋田さんは笑う。引き継ぐ前も加えると、70年以上の歴史があるという。
燃料を重油から木にしたのは30年余り前。廃材を購入するほか、適当な大きさに切って持ってきてくれる大工もいる。「木で沸かした湯は柔らかくて、冬はようぬくもるみたい」。3年前の西日本豪雨の時には、1カ月余り無料で開放したという。
「足が悪いし、後1、2年できるかねえ」と言いながらも、「番台から常連さんと話ができるのが楽しみ。元気なうちは続けようかね」と話す。
【中国新聞 2021.08.23】

日の出湯(2018.11撮影)
かつては庶民の社交の場の筆頭でもあった銭湯。いつの間にか次々と姿を消して、この日の出湯にも遠方からわざわざ訪れる人もあるやに聞く。
古い町並を歩いていると銭湯の建物を見かけることこそしばしばだが、たいていは閉業している。
現役のままであることがもはやとても貴重になってきているようだ。いつまでも続いてほしいと思うのは簡単だが果たして・・。