国有1棟「耐震化を」 被覆支廠巡り広島知事
広島県が所有する全3棟を耐震化する方針を示した最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)で、湯崎英彦知事は25日、残りの1棟も耐震化するよう所有者の国に求める方針を示した。国の姿勢次第で、L字形に並ぶ全4棟がまとめて保存される可能性が出てきた。
湯崎知事は記者会見で、内部見学できるように耐震化する県の3棟と同様に、国の1棟も「安全性の確保が重要」と強調。同じ工法での耐震化へ「国に対し、連携して取り組むようお願いしたい」と述べた。利活用の検討や国の重要文化財(重文)指定への調査に協力を求める考えも示した。
湯崎知事の発言について、国の1棟を管理する中国財務局は「県や市との議論を踏まえ、適切に対応したい」とコメントした。
県は2019年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」という安全対策の原案を示した後、被爆者団体の反対などを踏まえて20年度の着手を見送った。今月19日、内部見学案(1棟あたりの概算工事費5億8千万円)での3棟の耐震化に転換する方針を表明した。
湯崎知事は転換した理由について、昨年10~12月の耐震性の再調査や国重文級の価値があるとの専門家の意見、財源確保に向けた国との協議などを総合的に勘案したと説明した。
最終的な保存棟数については「重文に指定されるかどうかや、利活用の可能性を十分見極める必要がある」と述べるにとどめた。
重文指定に向けて検討組織をつくり、有識者や被爆者団体から利活用の意見を聞く意向を示した。
【中国新聞 2021.05.25】
旧陸軍被服支廠については最近になって大きな動きがあり、耐震化費用の再算出結果から方針が見直され、保存の方向に向いつつある。
以前も書いたが被爆建物というだけではなく、大正初期のRC造りの建物という点で非常に価値が高く、残すべき建築物と思う。重文指定されるなら後者の重みが強いものと想定される。
しかし課題もある。4棟の建物をすべて残したとして、効果的に活用されないと、維持費がかさみ無用の長物化してしまうことにもなりかねないからだ。またその活用の内容にも大きく結果が左右されることになるだろう。
そこのシミュレーションを行ったうえで最終決定されるものと思うが、どのような結論となるか、静かに見守りたい。
by mago_emon2 | 2021-05-27 21:10 | 伝統的建造物