廿日市市が世界遺産の島・宮島の中心部の歴史的な町並みを保全するため、2020年度に国へ重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定の申請をする方針であることが5日、分かった。当初は19年度中の申請を目指したが、持ち越すかたち。今後、建物を耐震補強する際に住民が利用できる補助制度の周知に力を入れ、建物所有者の同意の拡大を図る。
選定を目指すエリアは町家通り一帯から大願寺、大聖院にかけての約16.8ヘクタール。この区域内にある約560戸のうち、江戸時代から昭和初期までに建てられた「伝統的建造物」は185戸に上る。
国の重伝建に選定された場合、所有者が建物を売却せざるを得なくなった際に市が保存を目的に緊急的に買い取ることができる。また、伝統的建造物の所有者は土地の地価税や固定資産税が非課税となる優遇措置もある。併せて、これまで市の単独事業だった建物の修理・保存費用などについて国から補助される。
市は15年度、重伝建選定に向けた条例を制定し、作業を本格化。昨年1月には「19年度中に重伝建に申請」との方針も示し、同6月に保存計画を策定した。しかし、国が「選定には建物所有者の7割の同意が必要」とするのに対し、復元的な改修にコストがかかることなどから同エリアの同意率は約54%と伸び悩み、「申請は住民の機運が高まった時点」とトーンダウンした経緯がある。
市は今後、宮島の今後100年の施策の方向性を示す「宮島まちづくり基本構想」を策定し、島の自然、文化、景観の保全に取り組む。併せて島の歴史的な建造物を守り、後世に残す意義を住民に丁寧に説明し、同意率の引き上げを図る。
【中国新聞 2020.02.06】
今年度中の申請を目指すという話題はあったが、その後しばらく続報を聞かないなと思うと事情がわかった。
住民は伝統的な町並景観を守るため、すでに十分認識はされているものと思われるが、そのような町での重伝建選定というのがどういったメリットをもたらすのか、案外負担の大きいものであるのかもしれない。
頓挫することだけはないように願いたいものだ。