修理・修景 補助広げ前進 -重伝建 魅力発信道半ば
重伝建選定の一報を受け、市が祝賀会を開いた鞆町の常夜灯前。1週間後の今月5日、観光客の姿はまばらだった。同町の鞆の浦観光センターの片岡明彦局長は「重伝建は、まだ旅行者に浸透していない。継続的に情報発信する必要がある」と語る。
重伝建の地区には、江戸時代からの歴史的な町家や土蔵が約280棟残る。全国に誇れる町並みの保存は道路問題の解決と合わせ、当初から同町の課題だった。
県も、鞆港埋め立て・架橋計画撤回後に大きな決断をした。15年度、町並み保存のための市基金に5億円の交付金を拠出した。市は町家の修理や町並みに合わせた修景の補助率をアップ。15~17年度の3年間の補助で、計41棟の修理・修景が一気に進んだ。
一方、鞆町の魅力をインターネットなどで発信し、全国からまちづくり事業のための寄付を集める県の構想は、4年連続で関連予算を計上するものの実現できていない。県地域力創造課は「市と協議している。住民の機運も大事でタイミングを探っている。本年度中の制度設計を目指す」とする。
地元からは、重伝建地区にとらわれずに、鞆町全体の観光や福祉の向上に使えるようにしてほしいという声が上がる。制度設計が遅れる背景には、広域の行政を担う県が、一地域に特化した仕組みをつくる難しさもあるとみられる。
市が重伝建地区内で計画する町並み保存の拠点施設も、本年度の設計を見送ることになりそうだ。住民ワークショップなどで出た地元の意見集約を踏まえて、機能の配置の検討を続けているとする。
町並みを保存するための地元組織の立ち上げなどの課題も残る。市幹部は、「これからは、今まで以上に住民のまちづくりへの思いや取り組みが大切になる」と打ち明ける。歴史を生かすまちづくりで県と市、地元が一丸となれるか。重伝建選定のタイミングは好機でもある。
【中国新聞 2017.12.09】
重伝建地区そのものは、一般には認知度が高いとは言いがたい。重伝建地区となったことだけでは訪問客の大幅な増加、関心の高まりにつながると期待するのは、今はまだ難しいものがある。
ただこの制度、活用法しだいでは町並・町家の状態の保持と、相応しい程度の観光地化とのバランスを非常によい方向に持っていくことができる。鞆の場合、既に近年訪問客が増加しているので、後は関心をもう少し町並・町家の方向に差し向け貴重さに気付いていただけるよう、保存の面、そして周知の面双方での取組が必要だろう。
そのためには記事内にもある町並の拠点施設の整備は有効だ。他の重伝建地区の例を色々参考にしながら、まずその辺りから着手するべきではなかろうか。
by mago_emon2 | 2017-12-10 13:46 | 鞆の架橋計画と町並保存