尾道3小 進まぬ耐震化
同市立の小中学校は約40校。3校を除き、いずれも耐震化を終えるか、めどが立っている。市教委は市議会などで、16年度中に3校の耐震化の方針を決めると説明してきた。
3校とも経年劣化で鉄筋の腐食などが進む。市教委が14~16年度に実施した診断では、久保小(1933年築)は耐震補強可能の判定。長江小は管理教室棟(64~66年築)がコンクリートの弱い部分を壊せば補強可能、特別教室棟(67年築)は補強不可能と判定された。土堂小は37~64年築の3棟がいずれも補強可能だった。
だが、市中心部の斜面地にある3校は、工事車両の進入路や仮設校舎建設の際の代替グラウンド確保などの課題がある。市教委の安藤文夫学校施設整備担当主幹は「工事による住民生活への影響も考えなければならない」とする。
さらに、広島土砂災害を踏まえて県が進める調査で、土砂災害警戒区域などに指定される可能性もある。「災害時の避難所としての適正も考慮する」と安藤主幹。県は市教委の要望を受け、18年度に予定する3校学区の調査を前倒しする検討を進めている。市教委は調査結果を待ち、方向性を決める方針だ。
市教委は当初、久保小と土堂小が歴史的建造物であることを考慮し、外観に影響を与えない耐震補強を模索していた。現在は外観にこだわらない形で検討している。
歴史ある建物は尾道の景観をつくってきた。福山市立大都市経営学部の西川龍也教授は「土堂小は中世から現代までが混在する尾道らしい街並みの一部。校舎の下を生活道路が走る景観も独特」モダンな外観で、御影石製の手すりなどを備える久保小についても「文化財として活用する価値がある」とする。
西川教授は「安全性が重要」とした上で、「他の自治体では博物館に転用するなどの例もある。斜面地全体のビジョンを持つべきだ」と訴える。市教委の松尾寛教育総務部長は「市の考えを押しつけるのではなく、地域の方々と一緒に考え、理解を得ていきたい」と話す。
【中国新聞 2017.05.14】
学校建築というのも、例えば明治期に建築された一部の建物は国重文にもなるなど、時代の先進を象徴するもの、地域のシンボルでもあったことで保存の対象になる事も少なくない。
昭和に入ってからの学校建築でも、洋風建築的価値のあるもの、また戦災復興などの目的別の貴重さから、もはや伝統的建造物としての価値を持っているものも少なくない。
加えて地域の住民にとっては、この建物で学んだという思い入れは他の建物よりひときわ強いのは言うまでも無く、建て替えには抵抗を覚える人も多いだろう。
いうまでもなく耐震性は低いこれらの建物、建設当時とは違い周囲に施工が困難といった個別の事情もあり、残すことを最優先というのはやはり様々な困難があるのだろう。
残すかなくして新しくするか、自治体の采配いかんとなるのだろうが、私の個人的な思いとしてはやはり残す方向で考えてほしい。
by mago_emon2 | 2017-05-14 20:55 | 伝統的建造物