生活道整備か景観保存か 架橋撤回 知事、鞆で説明
「命の道を断ち切った。代わりになる生活道路を身をもって考えてほしい」。鞆港西側の平地区の住民たちは、狭い道幅や地域の衰退など、生活道路に関わる課題を指摘。架橋計画を撤回した理由説明に、納得できないとする意見が続いた。
代替として示す山側トンネル案について、商店経営武内孝之さん(40)は町内の交通量が減ればコンビニなどの経営が厳しくなると懸念し、「地元の生活を何も理解していない」と憤った。途中退席した無職男性(72)は、「トンネル案の安全対策が聞きたかった。昔から鞆で生活する住民の声を聞いていない」と不信感をあらわにした。
架橋反対派の住民を中心に、計画撤回を「知事の英断だ」と理解を示す意見も相次いだ。県の事業案に多くの部分で賛同という無職平田由紀さん(58)は「鞆の景色や町並みという財産を、次世代にそのまま渡したい」と受け止めた。
約2時間半、対立し続けた意見に、戸惑う人も。鞆町育ちの大学生女性(21)は「住民側の時が止まっている。もっと未来のことを話し合う場であってほしかった」と肩を落とした。飲食店経営の箱井琴子さん(65)は「架橋賛成、反対どちらの意見も分かる。住民同士がいがみあっていても前に進まない」と懸念を口にした。
【中国新聞 2017.04.03】
鞆の町中にある県道の幅員の狭い区間。一言でいえば、これさえなければ一連の架橋埋立て計画に対する論争が生じることもなかったわけだ。
この狭小区間の影響をまともに受けるのが、鞆地区の中心の南西側にある平地区。一方で観光ホテルなどもある東海岸地区などは、賛成でも反対でもないという住民も少なくないのではないだろうか。
この知事訪問を控えた3月29日の記事にも取上げられている。
そこには、平地で将来の架橋を睨んで宅地や畑が県に買収された歴史も紹介されている。古くからの港町・漁師町であり、代々の住民の先祖からの思いもあるだろう。
地元のしがらみ的なものを全て汲むのは当然無理がある。住民一戸一戸の負う歴史、思いは一つとして同じものはないだろうし、全住民が満足する解決策はあるはずはない。
ただこのまま手を拱いていてもいいはずは無い。
そしてこの論争によって、古い町並の保存が遅れに遅れていることが何よりも気がかりだ。
今年になって、ようやく重い舵が切られたようだが・・。
by mago_emon2 | 2017-04-03 21:50 | 鞆の架橋計画と町並保存