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恋しき「分散型ホテル」に ― 料亭旅館の機能復活へ

府中市は、同市府中町の旧料亭旅館の複合施設「恋しき」と周辺の空き家などについて、宿泊や飲食に利用する「分散型ホテル」として本格的な再生に乗り出す方針を固めた。専門家や市民でつくる検討委員会の答申に沿った内容。かつて著名な政治家や文化人が訪れた恋しきの料亭旅館の機能を復活させ、まちのにぎわい創出につなげる。

答申によると、江戸期に石州街道の宿場町として栄えたエリアにある恋しきと周辺に点在する古民家や歴史的な建造物を宿泊用の客室や食堂に改修する。各施設に機能を分散させ、まちをホテルのように見立てる。管理運営は官民で連携し、持続可能な体制を探る。空家の解消や交流人口の増加も狙う。

検討委は、観光協会や大学、地元まちづくり団体の代表者たち委員10人で構成。昨年6月から計3回、活用策を協議してきた。分散型ホテルの実現に向け、恋しきの母屋と離れの耐震補強や消防設備の充実、来訪者に愛される料理とサービスの提供なども求めた。

市は今夏、料亭機能の再生に向けて日本料理店喜多丘(広島市東区)の北岡三千男店主による創作料理の開発や料理講習会を計画。フランスの飲食店ランキング「ラ・リスト」の2020年度版でトップ千店の一つに選ばれた喜多丘の知名度を生かし、食を目的とした集客力の向上を図る。

恋しきは1990年に旅館を廃業。19年3月には母屋の飲食テナントが不採算を理由に撤退した。運営会社が将来的な修繕を含めて維持管理が困難になったとし、市が20年10月に1億8600万円で購入した。現在、母屋は一般公開と貸室などの利用にとどまり、旅館と料亭の機能は失われたままになっている。

検討委員会長で市観光協会の高橋良昌会長は「建物の歴史的な価値を生かしながら、誰もが利用できる施設としてほしい」と強調する。答申を受けた小野申人市長は「恋しきが最も輝いていた時代に再生させたい」としている。

【中国新聞 2022.06.19】


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「恋しき」の母屋外観と中庭からの眺め




市が恋しきの建物を買収するとの記事を見て、2年弱ぶりの続報だ。

ある程度の都市部、または観光要素の多い町ならともかく、府中のような小都市においてこのような取組を成功させるというのは、少々なことではないと感じる。

しかし2年弱の間熟考の末、成功を見込んでのことだろう。注視していきたい。


# by mago_emon2 | 2022-06-20 19:47 | 伝統的建造物  

温泉津に活気 新店舗

大田市の温泉津温泉街に16日、古民家を改修し、サウナ、カフェバー、ギャラリーの機能を持たせた店舗がオープンする。U・Iターンした30代の男女3人が運営。旅館以外の施設が乏しかった温泉街を盛り上げようと意気込んでいる。
店舗の名称は「時津風」。運営する3人は浜田市出身の布施千暁さん(34)と戸倉幹雄さん(34)、兵庫県出身の小林新也さん(34)で、サウナ好きのオンライン座談会で意気投合したのを機に店舗を計画。3人が設立した会社が、地元事業者から運営を請け負う形式で実現させた。
2階建ての古民家の1階部分約180平方メートルを、自分たちでの作業も交えて改修。8人程度が利用できるサウナは、石州瓦の材料で作ったれんが状の石を熱源にする。水風呂には石見焼のかめを使用。壁の建材には石州瓦や地元の木材が使われている。サウナ部分だけは、5月の大型連休明けの開業を予定している。
カフェバー部分は15席。ギャラリーでは定期的に企画展を開き、土産物の販売もする。布施さんは「若い世代を中心に活気を生み出し、交流人口の増加につなげたい」と張り切っている。
【中国新聞 2022.04.15】


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温泉津温泉街


大森銀山の積出でも賑わった温泉津の町は伝統的な家並が連なり、旅館も団体客を受け入れるような大型なものは皆無で、現代では珍しいといえるほどのいわゆる鄙びた温泉街が展開している。
一方で記事にあるように旅館以外の店舗が非常に少ない。昼の共同浴場巡りなどのついでに立ち寄れるところが少なく、宿泊して夜の温泉街を散策するも暗い夜道ということで、ひっそりとしているのが実際のところだ。
地元の人による観光客に迎合しない形のこのような取組は応援したい。

# by mago_emon2 | 2022-04-16 16:21 | レトロ商店街・店舗等  

廃材燃料 憩いの銭湯-日の出湯 レトロ空間人気

矢野西5丁目の銭湯「日の出湯」。廃材で沸かしたお湯を使い、浴室は70年以上ほとんど変わらない、レトロなタイル張りになっている。
営むのは秋田敏子さん(83)。売りに出ていたのを購入し、1966年に夫の故敏夫さんと開業した。
「シャワーを付けるとか少し手を入れたけど、ほどんと当時のまま。昔のタイルがないけえ、湯船はつぎはぎよ」と、秋田さんは笑う。引き継ぐ前も加えると、70年以上の歴史があるという。
燃料を重油から木にしたのは30年余り前。廃材を購入するほか、適当な大きさに切って持ってきてくれる大工もいる。「木で沸かした湯は柔らかくて、冬はようぬくもるみたい」。3年前の西日本豪雨の時には、1カ月余り無料で開放したという。
「足が悪いし、後1、2年できるかねえ」と言いながらも、「番台から常連さんと話ができるのが楽しみ。元気なうちは続けようかね」と話す。
【中国新聞 2021.08.23】

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日の出湯(2018.11撮影)

かつては庶民の社交の場の筆頭でもあった銭湯。いつの間にか次々と姿を消して、この日の出湯にも遠方からわざわざ訪れる人もあるやに聞く。
古い町並を歩いていると銭湯の建物を見かけることこそしばしばだが、たいていは閉業している。
現役のままであることがもはやとても貴重になってきているようだ。いつまでも続いてほしいと思うのは簡単だが果たして・・。


# by mago_emon2 | 2021-08-23 21:09 | レトロ商店街・店舗等  

国有1棟「耐震化を」 被覆支廠巡り広島知事

広島県が所有する全3棟を耐震化する方針を示した最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)で、湯崎英彦知事は25日、残りの1棟も耐震化するよう所有者の国に求める方針を示した。国の姿勢次第で、L字形に並ぶ全4棟がまとめて保存される可能性が出てきた。

湯崎知事は記者会見で、内部見学できるように耐震化する県の3棟と同様に、国の1棟も「安全性の確保が重要」と強調。同じ工法での耐震化へ「国に対し、連携して取り組むようお願いしたい」と述べた。利活用の検討や国の重要文化財(重文)指定への調査に協力を求める考えも示した。

湯崎知事の発言について、国の1棟を管理する中国財務局は「県や市との議論を踏まえ、適切に対応したい」とコメントした。

県は201912月に「2棟解体、1棟の外観保存」という安全対策の原案を示した後、被爆者団体の反対などを踏まえて20年度の着手を見送った。今月19日、内部見学案(1棟あたりの概算工事費58千万円)での3棟の耐震化に転換する方針を表明した。

湯崎知事は転換した理由について、昨年1012月の耐震性の再調査や国重文級の価値があるとの専門家の意見、財源確保に向けた国との協議などを総合的に勘案したと説明した。

最終的な保存棟数については「重文に指定されるかどうかや、利活用の可能性を十分見極める必要がある」と述べるにとどめた。

重文指定に向けて検討組織をつくり、有識者や被爆者団体から利活用の意見を聞く意向を示した。

【中国新聞 2021.05.25



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旧陸軍被服支廠については最近になって大きな動きがあり、耐震化費用の再算出結果から方針が見直され、保存の方向に向いつつある。

以前も書いたが被爆建物というだけではなく、大正初期のRC造りの建物という点で非常に価値が高く、残すべき建築物と思う。重文指定されるなら後者の重みが強いものと想定される。

しかし課題もある。4棟の建物をすべて残したとして、効果的に活用されないと、維持費がかさみ無用の長物化してしまうことにもなりかねないからだ。またその活用の内容にも大きく結果が左右されることになるだろう。

そこのシミュレーションを行ったうえで最終決定されるものと思うが、どのような結論となるか、静かに見守りたい。


# by mago_emon2 | 2021-05-27 21:10 | 伝統的建造物  

宮島の門前町重伝建へ―東西2地区「異なる顔」

文化審議会が21日に重要伝統的建造物群保存地区の選定を答申した廿日市市宮島町の厳島神社周辺の門前町は、五重塔が立つ「塔之岡」と呼ばれる丘陵を挟んで東西の2地区に分かれ、成立過程や性格の異なる二つの顔を持っている。

より歴史が古いのは、厳島神社の南側にあり、神職や宮大工など神社、寺院の関係者の住居が立ち並んだとされる西町。戦国時代には成立していたとされている。小道に面して築かれた石垣や石段が、狭い傾斜地に並ぶ景観が特徴だ。

一方の東町は、江戸時代までに埋め立てによって築かれ、神社や寺院への参拝客たちの門前町として栄えた。海岸線に沿って弓形に通りが形成され、旅館や飲食店だった町家が通りに面して隙間なく立ち並ぶ。いぶし銀の瓦や軒裏の垂木配列、格子などの建築様式が町並みの統一感を醸す。

町家の間口は狭く、通りに面して母屋、中庭を挟んで台所や風呂などの建物を廊下でつなぐ配置が一般的。奥行きが深い「うなぎの寝床」だ。両地区には560戸があり、うち190戸が保存の必要な歴史的な建物とされている。

宮島は、第二次世界大戦で空襲被害がなく、1952年に文化財保護法に基づく国の特別名勝・特別史跡に指定されて以降、建物の建築には許可が必要となった。2003年に公益財団法人日本ナショナルトラスト(東京)による調査で、江戸時代から昭和初期までの伝統的建造物が100戸以上残っていると分かり、町並みを評価、保存する動きが始まった。

0506年に廿日市市教委による建物調査に携わった奈良女子大の藤田盟児教授(建築史)は「聖と俗、宗教と商業の二つの町で成り立っている重伝建は全国で初めてではないか」と意義を説明する。町家の外観は、赤いベンガラ塗りと黒や茶色の塗装を使い分けていたことも分かっている。

「華やかな町家の外観は他の地域にはない。今後の復元的修理でかつての雰囲気がよみがえれば、町並みを保存しつつ発展できる」と期待している。


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廿日市市宮島町の厳島神社の周辺に栄える門前町16.8ヘクタールが、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定される方針となった21日、地元の関係者からは町づくりの機運を高める機会になると期待の声が上がった。

住民組織の宮島町総代会長の正木文雄さん(71)は「まちづくりもこれからが本番だ」と歓迎した。宮島への観光客の大半は、世界遺産である厳島神社の拝観や弥山からの眺望、宮島水族館の見学などを楽しむ。宮島の町の形成過程や島民の暮らしを伝える建物の価値を認めた重伝建への指定は、「世界遺産の島の観光の新たな付加価値となる」と受け止める。

伝統的な町家を再評価し、町並みを守ろうとする新たな活動も始まった。今年4月、住民たちが「みやじまの町家に親しむ会」を設立。月に1回、町家の特徴を学ぶ勉強会を開いたり、町を歩いて実物を見学したりしている。代表の内山健さん(65)は「ソフト面から宮島の町並みの魅力を伝える末永い取り組みにしたい」と力を込める。

重伝建選定が正式に決まれば、所有者が同意し、伝統的建造物と認定される町家を改修する際はできるだけ建てられた時代の外観に戻すよう求められる一方、補助金支給の対象となる。江戸時代の広報や資材、意匠など、修理、改修にも注意が必要なため、市内の建築業者による勉強会も始まる予定だ。

松本太郎市長は「国に文化的価値が高いと認められ、市民の大きな誇りとなる。歴史と文化を守りつないできた宮島の町を全国にPRできる」とコメントを発表した。

【中国新聞 2021.05.22

 ※二つの記事を掲載しています(表題は一つ目の記事のものを示します)。


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「西町」「東町」の各町並風景



宮島の重伝建選定への動きは住民への同意の取り付けにやや時間がかかったように思えるが、無事最終段階に達したということで間違いないところだろう。

宮島は厳島神社の世界遺産への登録後訪問客の急増に至った。重伝建への選定は一般には大きく認知されていないため、これによりさらに観光客が増加するということはないだろう。

むしろ、保存地区に指定された区域で観光客向けにあしらった店舗や施設の増加が抑制されるだろうことを期待したい。

町家地区では伝統的な建物が往時の姿を保ち、また取り戻すことで直接歴史や文化が感じ取れ、土産物屋の建ち並ぶ通りとの差別化が図られ、共存していく姿を期待したい。


# by mago_emon2 | 2021-05-23 10:38 | 重伝建保存地区